本研究は分子内にCF_3基とエステル基、メトキシ基あるいは水酸基を合わせ持つ光学活性スルフィド類を対象とし、フッ化物イオンによって促進される陽極メトキシ化をキー反応とし利用することにより、生理活性が期待される有機フッ素化合物の新合成法を開拓することを目的として行ったものであり、初期の目的をほぼ達成できた。 1. フッ素メディエーターにを利用する光学活性フッ素系生理活性物質の創製 光学活性トリフルオロプロピレンオキシドから容易に得られるスルフィドをフッ化物イオン存在下、メタノール中で電解酸化すると硫黄原子の隣接位に選択的にメトキシ基を導入することができた。この生成物に炭素求核剤存在下、ルイス酸を作用させ高いジアステレオ選択性をもってアリール基やアリル基などの炭素求核剤を導入することに成功した。。 2. フッ素メディエーターによる分子内陽極アルコキシ化を利用する生理活性含CF_3オキサチオラン類の合成 光学活性トリフルオロプロピレンオキシドとパラ置換ベンジルチオール類との反応により分子内にCF_3基とOH基を合わせ持つ光学活性スルフィド類1を合成した。ついで、1ををフッ化物イオン存在下、白金陽極によりアセトニトリル溶媒中で電解酸化したところ、分子内アルコキシ化による環化が起こり、目的とする含CF_3オキサチオラン類2をジアステレオマー混合物として高収率で得ることに成功した。本反応はスルフィドの分子内陽極アルコキシ化の最初の成功例でもあり、電極反応論的にも大いに意義がある。また、得られたCF_3オキサチオラン類はホスホリパーゼA2阻害作用を示すことも分かった。
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