研究概要 |
本反応の窒素の酸化および[2,3]転位反応条件は既に検討済であるので光学純度を向上させる系の合成検討を行った。また、本研究補助金にて購入した光学活性キャピラリーカラムを使用したガスクロマトグラフィーにより非常に精度の高い不斉収率を求めることが可能になった。今まで270MHzNMRにて測定していた光学純度では±10%程の誤差があることが判明した。NMRで算出した70%deの光学純度のものは実際は補助基をはずしてガスクロマトグラフ法で測定したところ62〜65%であった。ガスクロマトグラフ法を分析に取り入れたことにより、転位反応温度が高くなる程不斉収率は悪くなり、-30℃で反応させた時が一番、反応収率共に不斉収率が良好であることが数値化できた。また、予想したとおり、不斉補助基であるC_2対称ピロリジン環に近い位置が嵩高くなるほど、不斉収率の向上がみられ、研究計画書で記載したとおりの効果があらわれた。現在のところ、tert-ブトキシメチル基やイソブチル基、ネオペンチル基の場合が良好であり、70〜80%eeの不斉収率が得られた。不斉収率を向上させると化学収率は低下する傾向が他の反応ではよく見かけるが、本転位反応による不斉誘導においてはこの様なことは起こらず、どの反応も化学収率とも良好であった。また、不斉補助基は転位後、亜鉛により開裂させることにより容易に回収再利用できる。現在、さらに不斉収率の向上を目指して検討を行っている。これらの結果は日本化学会第74春季年会(京都)「ジアステレオ選択的不斉誘導による三級アルコールの合成」(平成10年3月28日、2D607)およびアメリカ化学会春季年会(ダラス)「Asymmetric Synthesis of Tertiary Alcohols Using C_2-Symmetric Pyrrolidine Auxiliaries」(1998年3月31日No167)(有機化学)で発表する。今回の合成結果を踏まえ、さらに一段と不斉収率を向上させることができる系(目標値90%以上)が見出せそうなので、次年度の早期にこの考えに従って検討を行い、次年度は合成計画どおり、光学活性エポキシドの不斉合成へと展開する予定である。
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