研究概要 |
本年度も光学純度を向上させる系の合成検討を行った。転位反応温度が高くなる程不斉収率は悪くなり、低温で転位反応を行うと不斉収率は向上する。特に-30℃で反応させた時が、一番反応の化学収率と不斉収率が良好であった。それ以下の温度では化学収率の低下が見られた。また、ピロリジン環上の置換基の立体的な影響を調べたところ2、5位についてはかさ高くなるほど、すなわちピロリジン環に近い位置が立体的に混む構造の置換基ほど不斉収率は向上するがtert-ブチル基の場合は全く転位反応が進行しなかった。さらに3、4位の置換基については、メトキシ基、エトキシ基および3、4位でジシロキサン構造の7員環を有する化合物を用いると不斉収率が高い。一方、3、4位にエポキシ環を有する系は著しく不斉収率が低かった。これらの不斉補助基は転位後、亜鉛により開裂させることにより容易に回収再利用できるが2、5位がtert-ブチルジメチルシロキシメチル基を持つ補助基は、脱保護によりヒドロキシメチル基を有する不斉補助基が回収された。さらにこの様な不斉補助基を(Z)および(E)のγ-ブロモトグリロニトリルと反応させ、それぞれ転位反応を行い、光学活性エポキシドの不斉合成へと展開している。これらの結果は第42回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(岐阜)「ジアステレオ面にを制御した分子内不斉誘導による光学活性三級アルコールの合成」(平成10年11月8日、2II13)で発表した。さらに、日本化学学会第76春季年会(神奈川)「C_2対称四置換ピロリジンを不斉補助基とする三級アミンオキシドの[2,3]転位反応および光学活性三級アルコールの合成」(平成11年3月28日、1C203)で発表する。
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