研究概要 |
本転位反応の不斉収率は、低温で転位反応を行うと向上した。特に-30℃で反応させた時が、一番反応の化学収率と不斉収率が良好であった。それ以下の温度では化学収率の低下が見られた。また、ピロリジン環上の置換基の立体的な影響は2、5位についてはかさ高くなるほど、すなわちピロリジン環に近い位量が立体的に混む構造の置換基ほど不斉収率は向上するがtert-ブチル基の場合は全く転位反応が進行しなかった。さらに3、4位の置換基については、メトキシ基、エトキシ基および3、4位でジシロキサン構造の7員環を有する化合物を用いると不斉収率が高い。一方、3、4位にエポキシ環を有する系は著しく不斉収率が低かった。これらの不斉補助基は転位後、亜鉛により開裂させることにより容易に回収再利用できるが2、5位がtert-ブチルジメチルシロキシメチル基を持つ補助基は、脱保護によりヒドロキシメチル基を有する不斉補助基が回収された。さらにこの様な不斉補助基を(Z)および(E)のγ-ブロモチグリロニトリルと反応させ、それぞれ転位反応を行い、光学活性エポキシドの不斉合成へと展開している。これらの結果は日本化学会第74春季年会(京都)「ジアステレオ選択的不斉誘導による三級アルコールの合成」(平成10年3月28日、2D607)およびアメリカ化学会春季年会(ダラス)「Asymmetric Synthesis of Tertiary Alcohols Using C_2-Symmetric Pyrrolidine Auxiliaries」(1998年3月31日No167)(有機化学)および第42回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(岐阜)「ジアステレオ面を制御した分子内不斉誘導による光学活性三級アルコールの合成」(平成10年11月8日、2II13)および日本化学会第76春季年会(神奈川)「C_2対称四置換ピロリジンを不斉補助基とする三級アミンオキシドの[2,3]転位反応および光学活性三級アルコールの合成」(平成11年3月28日、IC203)で発表した。
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