本研究ではプロキラルなC=N不飽和結合に対するアリル型有機金属試薬の付加反応における立体選択性について検討を行った。 基質として用いたイミンは、種々のN-保護イミンを用いた。具体的には、N-シリルイミン、N-アルミニウムイミン、N-ボリルイミン、N-スルフェンイミン、N-トシルイミン、N-ジフェニルホスフィノイルイミン、N-トリチルイミンについて不斉アリル化反応を行った。アリル化剤は主にアリルホウ素化合物を用いた。まず不斉反応を検討する前に上記のイミン類の反応性を調べるために、トリアリルボランとの反応を試みた。N-保護基の嵩高いN-トリチルイミン、N-ジフェニルホスフィノイルイミン、N-トシルイミンではほとんど目的のアリル化反応は進行しなかった。N-トシルイミンはアリルグリニヤ試薬とは反応することがわかったので不斉修飾アリルグリニヤ試薬による反応を行ったが、不斉選択性は10%程度であった。その他のメタロイミン類は比較的良好な反応性を示したので、これらについて不斉アリル化を行った。 不斉アリル化剤には、不斉修飾したアリルホウ素化合物を用いた。不斉修飾剤として、テルペン(ピネン、カレン)誘導体、光学活性ジオール、アミノアルコール、N-スルホニルアミノアルコール、N-スルホニルアミノ酸を用いた。メタロイミンのなかでもN-シリルイミンは最も反応性に優れており、-100℃でもアリル化反応が進行した。とくにノルエフェドリンから誘導したN-スルホニルアミノアルコールで不斉修飾したアリルホウ素試薬を用いると、94%eeのエナンチオ選択性が達成され、これはイミンのエナンチオ選択的アリル化におけるこれまでの最高の値である。
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