研究概要 |
シクロカーボンの構造の分光学的研究 我々は既にシクロ[n]カーボン(n=12,16,18,20,24)の前駆体を合成し、それらのレーザーデソ-プションマススペクトルにおいて実際シクロ[n]カーボンが生成することを見いだしている。シクロ[n]カーボンの検出はこれまでに幾つかの報告があるが、詳細な構造研究はなされていない。今回、我々の前駆体から発生させたシクロカーボンの紫外光電子スペクトル(UPS)を測定することにより、その構造について検討した。その結果、炭素数が4n個のシクロカーボンはポリイン構造であるのに対して、4n+2個の炭素数のものはクムレン構造である可能性が高いことがわかった。 カゴ型カーボンクラスター(C60H6)の合成とフラーレンへの異性化 ベンゼン環を核とするカゴ型化合物(C60H6)の脱水素異性化反応によるフラーレンの合成について検討する目的で、上記のシクロカーボン発生法に従い三次元的シクロファン構造をもつC60H6の前駆体化合物を合成した。さらにそのレーザデソ-プションマススペクトルにおいて、C60H6だけでなくC60も生成することを見いだした。この結果は、ポリインの環化によりカゴ状のフラーレン構造が合成できる可能性を実験的に示しており、金属内包フラーレンの合成において重要な知見を与えるものである。
|