画期的な分子内ディールス-アルダー反応系の開発 ヒドロキシルアミンは2官能性ヘテロ化合物として知られ、ニトロン、オキシム、ニトリルオキシド等、その誘導体の化学は古くより有機合成的に重要な反応として多彩に展開されてきた。これまでに更なるヒドロキシルアミン誘導体の潜在的な可能性について模索してきたが、本研究は、その結果見い出した新反応であるヒドロキサム酸を連結基に用いる分子内D-A反応に関するものである。 最近分子内Diels-Alder反応(以下D-A)において、ジエンとジエノフィルをヘテロ原子で連結するシステム(temporary heteroatom connection)が注目されているが反応性、立体選択性等に問題を残している。ヒドロキサム酸を連結基に用いる分子内D-A反応について検討した結果、従来の例と比較して非常に温和な条件下で高立体選択的に環化付加が進行することを見い出した。現在のところ、電子反発を最小にしようとするヒドロキサム酸部分の最安定配座が、環化付加反応の遷移状態においても寄与することで、反応性、及び立体選択性が向上したと考えている。ヒドロキサム酸部分の官能基変換も容易であり、この方法は分子内D-A反応について一般的に要求される次の4つの改善点、すなわちトリエン合成の簡便性、反応性、立体選択性、連結基の官能基化の簡便性を全て満足する画期的な系であると言える。
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