研究概要 |
フラノースもしくはピラノース構造を取る糖質誘導体が形成する三次元構造を「キラルな環境場」として捉え、その結果期待される不斉誘起によるジアステレオ選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発を目的とし、以下の課題を検討した。1、へきそふらのーす構造が形成する環境場での立体選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発、および2、ヘキソピラノース構造が形成する環境場での立体選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発である。課題1に関して、C-3位がアリルアルコール構造であるD-グルコフラノース誘導体を基質とするオルトエステルクライゼン転位にて得られる、グルコフラノース構造を置換基としてもつシクロヘキサノンおよびシクロヘキセノン誘導体への共役付加とヒドリド還元の立体選択性を検討した。また合成法が確立されているシクロペンテノンもしくはシクロペンテンカルボン酸とスピロ構造を形成するD-グルコフラノース誘導体を基質とした炭素官能基導入反応を検討し、高い不斉誘導が発現されるいくつかの例を見出した。すなわち、前者を基質とした共役付加反応による立体選択的アルキル基やマロニル基の導入と、後者を基質としたクライゼン転位反応である。課題2に関しては、メチル6-デオキシ-α-D-グルコピラノシドのC-4位に付加受容部を有し、かつC-2,3位水酸基が保護された種々の誘導体への、ビニル銅アート錯体を用いた共役付加反応によるβ位が置換されたブタン酸の不斉合成法を確立した。また同様な基質に対するルイス酸存在下でのアルキルラジカルによる共役付加反応においても高い立体選択性が確認された。さらにはD-ガラクトースおよびマンノース誘導体を基質とする共役付加反応やディールス-アンダー反応を検討し、高い立体選択性を発現する基質を見出す事も出来た。以上キラル補助剤としての糖質の利用に関して、多くの実用的な方法を開発することが出来た。
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