研究概要 |
ケイ素-ケイ素結合を含む小員環化合物は大きな歪みのために高い反応性を示すことが知られており、これら化合物の合成ならびに反応に関しては数多くの論文が報告されている。我々は3,4ベンゾ-1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エンが熱、光および遷移金属錯体触媒によって非常にユニークな化学的挙動を示すことを明らかにしてきた。本年度は、ケイ素上にイソプロビル基を導入した3,4-ベンゾ-1,1,2,2-テトラ(イソプロピル)-1,2-ジシラシクロブト-3-エン(1)を合成し、遷移金属錯体触媒存在下での反応を検討した。触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム存在した、化合物1とアセチレン、フェニルアセチレン、1-ヘキシン、ο-トリルアセチレンなどとの反応を行うと、5,6-ベンゾ-1,4-ジシラシクロヘキサ-2,5-ジエンが収率良く得られた。しかし、同様のパラジウム錯体触媒反応をメシチルアセチレン、トリメチルシリルアセチレン、ジメチルフェニルシリルアセチレンなどの嵩高い置換基をもつモノ置換アセチレン存在下で行ったところ、spC-H結合の活性化から生じる1-[アルキニル(イソプロピル)シリル]-2-(ジイソプロピルシリル)ベンゼンを収率良く与えた。また、化合物1とアセチレン類との(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)白金触媒存在下での反応においては、2種類の生成物、5,6-ベンゾ-1,4-ジシラシクロヘキサ-2,5-ジエンおよびアセチレン水素の転位を伴う生成物がおのおの得られることが明らかとなった。
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