研究概要 |
光学分割した(R)-および(S)-ジメチルビフェニル-2,2'-ジカルボニルクロリドと芳香族ジアミンからポリアミドを合成した。 この芳香族ポリアミドは軸不斉ビフェニレン連結部で剛直なセグメントを結合しているので、一種のらせん構造をとると予想されるが、コンピューターにより安定構造を計算したところ、「ジグザグらせん」とでも呼べる新規ならせん構造となることがわかった。そのらせん構造はジアミン成分により大きく異なるものであった。ジアミンとして4,4'-ジアミノアゾベンゼンを用いると、このらせんポリマー主鎖にアゾベンゼン構造が導入される。アゾベンゼンは光照射によりトランス-シス転位することが知られているので、このらせんポリマーの光による変形を詳しく検討した。ポリマー溶液に紫外光を照射するとCDスペクトルが大きく変化し、らせん構造のすみやかな変形が観察された。続いて可視光を照射したところトランス構造は可逆的にシス構造にもどることがCDスペクトル及びUV-visスペクトルにより確認された。このらせん構造の可逆的な光変形はこのポリマーが光学材料として応用できることを示し、極めて興味深いものである。 さらに、軸不斉連結部としてビナフチレン構造を有する芳香族ポリアミドを合成し、らせん構造の光変形をしらべたところ、同様に光照射により可逆的にらせん構造が変形することが認められ、新しい光学材料としての可能性を提示した。
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