研究概要 |
本年度は,昨年度に合成方法を確立した2つのクロロベンゾイル基を有するο-ターフェニルモノマーの重合と環集合部位を有する定序配列全芳香族ポリケトンの合成を目指したモノマーの精密合成およびその重合を検討した。ο-ターフェニル部位を有するモノマーの重合は遷移金属錯体触媒の芳香族カップリングにより行なった。遷移金属としてはニッケルを用い,還元剤に亜鉛,配位子にトリフェニルホスフィンおよびビピリジル,溶媒にジメチルアセトミアミド,N-メチル-2-ピロリドン,ジメチルフォルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒を用いた。重合は反応中の生成物の析出で高い重合度まで進行せず,生成ポリマーのインヘレント粘度は最大で0.17dL/gであった。生成ポリマーは184℃にガラス転移点を有していた。460℃まで重量減はなく,10%重量減温度は570℃であり,良好な耐熱重量減性を示した。後者の重合では電子的な分布を大きく変えることの期待できるフッ素含有基を利用して,その数と置換位置によりポリマーの配列の規則性を制御することを試みた。目的に合わせた以下の3種のモノマーを精密合成した:1.分子内に選択的に反応するアシル受容部位と親電子攻撃部位を持つ一分子重合型のモノマーでhead-to-tail構造のポリマーの合成を目指したもの,2.head-to-tail型ポリケトンの合成を目指した二分子重合型モノマー,3.ランダム型ポリケトンの合成を考えた二分子重合型モノマー。これらの重合は,五酸化ニリン-メタンスルフォン酸混合物溶媒中で直接縮合により試みた。得られたhead-to-head型,head-to-tail型,ランダム型の3種の芳香族ポリケトンの分子量は^1H-NMRスペクトルから末端定量法で計算して,2800,3300,および5800と推定された。
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