1.研究目的 (1)アルキルアンモニウム(C_nN^+)修飾層状粘土鉱物へのRF-ホスフィン錯体のインターカレーションと様々な層間距離を持つ固定化錯体(Rh-P/C_nN^+/clay)の合成。(2)層間固定化金属錯体による不斉触媒反応:触媒活性および不斉選択性への層間隔影響を明確にする。(3)ヘクトライト層間へのフォトクロミック化合物のインターカレーションと光化学反応による層構造変化。 2.研究成果 (1)様々な層間距離を持つ固定化錯体の合成:層間距離の制御には、次の3つの方法を行った。(i)Rh錯体の担持量を変化させて層間制御を試みた。平均分子サイズ1.16nmのRh-Norphos錯体では、担持量を15.4〜35.8mmol(100g-clay)^<-1>へ変えるとクリアランススペース(CS)は0.93〜1.40nmへ変化し0.43nmの範囲で制御できた。(ii)構造チューニングゲスト(C_nN^+)分子サイズを変化させて層間制御を試みた。用いたC_nN^+は1級(C_nH_<2n+2>NH^+_3、1°C_n)および4級アンモニウム(C_nH_<2n+2>)_2(CH_3)_2NH^+_3、4°C_n)で炭素数(C_n)を10、14、18と変えたところ、1°C_nでCS=0.37〜1.07nm(△CS=0.7nm)、4°C_nでCS=1.14〜2.63nm(△CS=1.49nm)の範囲で制御することが出来た。(iii)4°C_<18>N^+の担持量を23.4〜79.78mmol(100g-clay)^<-1>の範囲で変化させたところ、CS=2.41〜2.54nm(△CS=0.13nm)の狭い範囲で制御できた。(2)層間固定化金属錯体による不斉触媒反応:Rh-Norphos^+/HT錯体(HT=ヘクトライト)を用いて、環状不斉ラクトンの不斉水素化反応を行ったところ、HTの層間サイズに依存して不斉選択性(%e.e.)が大きく変化した。CS=0.93nmの場合に不斉選択性が22.4%e.e.と最大になり、それ以上に層間隔が拡大すると選択性は低下した。このときの反応溶媒で膨潤したCSは1.2nmであり、ゲストのRh-Norphosの分子サイズとほぼ等しい値であった。このことより、ゲスト錯体に最適の層間隔で最高の不斉選択性が得られたことになる。また、Rh-DIOP/C_nN^+/clayα-ピネンの不斉水素化を行ったところ、層間隔に依存して活性および選択性が大きく変化した。CS=2.38〜2.57nmの範囲では、収率が1.3〜7.3%で選択性は50〜70%e.e.であったが、CS=2.88nmに拡大すると、収率は99.8%、選択性は92%e.e.にまで向上した。以上の成果より、結晶性粘土鉱物ホストの層間を構造チューニングゲストで立体制御すると、触媒活性および不斉選択性を向上させることができた。さらに、詳細に層間を制御して活性と不斉選択性の向上および他のプロキラルな化合物の不斉水素化反応に展開できると思われる。
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