1. 研究目的 (1)アルキルアンモニウム(C_nN^+)修飾層状粘土鉱物へのRh-ホスフィン錯体のインターカレーションと様々な層間距離を持つ固定化錯体(Rh-P/C_nN^+/clay)の合成。(2)層間固定化金属錯体による不斉触媒反応:触媒活性および不斉選択性への層間隔影響を明確にする。 (3)へクトライト層間へのフォトクロミック化合物のインターカレーションと光化学反応による層構造層化。 2. 研究成果 (1)アルキルアンモニウム(C_nN^+)修飾層状粘土鉱物へのRh-ホスフィン錯体のインターカレーションと様々な層間距離を持つ多重修飾層間固定化錯体(MMS)の合成、(2)ホストの層電荷密度を変えることによるゲスト分子の立体化学制御、(3)MMSを触媒とする不斉など高度な分子認識触媒機能についての評価、 (4)MMSの層間サイズおよび層間ゲストの立体構造変化が及ぼす触媒挙動の明確化等を行った。すなわち、構造チューニングゲスト修飾という斬新な概念を導入して、層状構造を安定に保持した層間固定化錯体触媒を創製した。具体的には、用いたC_nN^+は1級(C_nH_<2n+2>NH_3^+、1C^*C_n)および4級アンモニウム((C_nH_<2n+2>)_2(CH_3)_2NH_3^+、4^*C_n)で炭素数(C_n)を10、14、18と変えたところ、1^*C_nでクリアランススペース(CS)=0.37〜1.07nm(ΔCS=0.7nm)、4^*C_nでCS=1.93〜2.88nm(ΔCS=0.95nm)の範囲で層間サイズ制御することが出来た。この結果、触媒活性およびその分子認識性は構造チューニングゲストのサイズと配向性に強く依存することを見出した。すなわち、α-ピネンの不斉水素化を行ったところ、低電荷密度のヘクトライト(NaHT)をホストに用いたRh-DIOP/C_nN^+/NaHT(CS=2.46〜2.78nm)では、収率が1.3〜7.3%で選択性は50〜70%e.e.であったが、約3倍の電荷密度を有するテニオライト(LiTN)をホストに用いたRh-DIOP/C_nN^+/LiTN(CS=1.93〜2.88nm)では、収率は99.8%、選択性は92%e.e.にまで向上した。さらに、高圧条件下(30気圧)において均一系錯体は活性および選択性が著しく低下するのに対し、MMS触媒は著しく高い値を維持し、安定な触媒であることを見出した。さらに、ケトンの水素化においても活性を示し、高選択性を得た。 以上の成果より、結晶性粘土鉱物ホストの層間を構新チューニングゲストで立体制御すると、触媒活性および不斉選択性を向上させることができた。さらに、他のプロキラルな化合物の不斉水素化反応に展開できると思われる。当初の目的の大部分は達成できたが、同目的の一つである「ヘクトライト層間へのフォトクロミック化合物のインターカレーションと光化学反応による層構造変化」については、同反応のみではホスト構造を変動させる条件を見出すには至らなかった。
|