金属やセラミックスの複合材料を主に傾斜機能材料の研究が進んでいる。本研究では高分子材料に分子レベルでの傾斜機能をもたせる意図で、スターポリマーの腕にガラス転移温度(Tg)に関する傾斜機能をもたせたスター共重合体の合成法を確立する。また高分岐なトポロジーからなるスター型ポリマーが自己組織化により単分子ミセルを形成し、球構造の階層的超格子変化の構造特性を明らかにすることを目的にした。 3. 1つのドメインからなるスター型傾斜共重合体の合成と秩序構造形成 上で取り扱った共重合体の腕はPS-block-S/I傾斜-block-PIからなる2つのドメインをもつスター共重合体であった。腕の偏折の度合いが階層的構造転移に与える影響を検討するため、腕がS/I傾斜構造のみからなるスター共重合体をスチレンとイソプレンのアニオン共重合からまず腕を合成し、DVBとの核形成反応を経由して調製した。示差熱分析(DSC)よりこの共重合体は1つのTgをもち、S/Iは分子レベルで混合した1つのドメインからなるスター共重合体であることを確認した。 スター型傾斜構造体はC^*濃度において腕数が51本以上のものは超格子構造を発現することがSAXSより明らかになった。またその構造はBCC構造で、soft sphereによる超格子構造形成と結論できた。腕数27本のものでは超格子構造の発現は見られず、腕鎖の偏折の強さに超格子発現は依存することも明らかにした。このように多分岐スターポリマー群が階層的に球格子構造を転移するのは、希薄溶液で″soft sphere″という分子鎖形態をとるという高分子性に由来することをはじめて発見した。
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