研究概要 |
本研究では高分子材料に分子レベルでの傾斜機能をもたせる意図で、スターポリマーの腕に傾斜機能をもたせたスター共重合体の合成法を確立する。また高分岐なトポロジーからなるスター型ポリマーが自己組織化により単分子ミセルを形成し、球構造の階層的超格子変化の構造特性を明らかにすることを目的にした。 1. 傾斜構造からなるスター型共重合体の合成と溶液特性 アニオン逐次成長法によりイソプレン(I)、スチレン(S)/IかつSと3段階に成長(r_1=0.25,r_2=9.5)させテーパードブロックアニオンを合成、これを腕としてジビニルベンゼン(DVB)とのベンゼン中での核形成共重合よりスター型傾斜構造体を合成した。形態と拡がりおよび粒径について検討した結果、傾斜構造からなるスター共重合体はブロッブモデルで表されるセグメント密度に関して傾斜構造をとっていることがわかった。また良溶媒中ではR_G/R_H=1.0(R_G、慣性半径;R_H、流体力学的半径)となり、スター共重合体は"soft sphere″として振る舞うこともわかった。 2. 格子形成 SAXSおよびTEMを測定手段として、溶液から固体に至る構造解析を行った。その結果、最外核鎖が重なる濃度(℃)付近でBCC構造を発現することがわかった。また腕数67本までのスター共重合体ではこの構造が固体膜ではラメラ構造に転移する。一方腕数が200を越えると単分子ミセルの大きさで固体膜でも球構造を保持することが明らかとなった。 3. 1つのドメインからなるスター型傾斜共重合体の合成と秩序構造形成 腕の偏折の度合いが階層的構造転移に与える影響を検討するため、腕がS/I傾斜構造のみからなるスター共重合体をスチレンとイソプレンのアニオン共重合からまず腕を合成し、DVBとの核形成反応を経由して調製した。スター型傾斜構造体は℃濃度において腕数が51本以上のものはBCC超格子構造を発現することがSAXSより明らかになった。 4. 超構造ポリマーの設計 重合可能なビニルモノマー中にスター共重合体を分散させ、UV照射による光ラジカル重合でBCCのような球格子構造をポリマーマトリックス中に永久固定する技術を開発した。この技術は3相相分離した超構造のナノポリマーを創成する新しい方法で、光学材料などの新素材を誕生させる技術と位置付けることができた。
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