本研究では(1)側鎖にアミノ酸、ペプチド構造を有するエポキシドの合成とカチオン開環重合(2)側鎖にアミノ酸、ペプチド構造を有する環状カーボナートの合成とアニオン、カチオン開環重合(3)側鎖にアミノ酸、ペプチド構造を有するメタクリルアミド、アクリルアミドの合成とラジカル重合(4)主鎖にアミノ酸構造を有するジオール、ジアミンとジカルボン酸との重縮合(5)ジオレフィンとジチオールとのラジカル重付加、ならびに得られたポリマーの物性について検討を行った。 (1)では分子量数千の対応するポリエーテルが得られた。アミノ基の保護基であるベンジルオキシカルボニル基は水添により定量的に除去され、側鎖にアミノ基を有するポリマーと、側鎖間の高分子反応によるポリペプチドの生成が認められた。(2)のアニオン重合においては分子量1万程度の対応するポリカーボナートが得られたのに対し、カチオン重合では構造不明のオリゴマーが得られた。カチオン重合においてはアミノ酸保護基の芳香環のフリーデルクラフト反応、主鎖へのバックバイティング反応の進行のためこのような結果になったものと推測された。(3)では分子量数万の対応するポリメタクリルアミド、ポリアクリルアミドが得られた。側鎖にジペプチド構造を有するメタクリルアミドのラジカル重合性は、モノペプチド構造を有するものよりも大きかった。これはペプチド間の水素結合により重合反応が有利になったためと考えられた。ポリマーの比旋光度は側鎖のアミノ酸の種類によらずモノマーよりも30度負に大きくなった。分子動力学計算によるシュミレーションの結果、これはポリマーにおいては側鎖の立体障害を緩和する方向にアミノ酸部分のコンホメーションが変化することが原因と推測された。(4)では分子量1万程度の対応するポリエステルアミドが得られた。主鎖のメチレン鎖長が長いほどポリマーのガラス転移温度は低くなり、偶奇効果が観測された。これはポリマー主鎖間の水素結合によるものと推測された。ポリマーはpH7.8の緩衝液中で加水分解性を示した。(5)では分子量1万程度の対応するポリエステルアミドスルフィドが得られた。ポリマーはリパーゼRhizopus arrhizusにより酵素分解性を示した。ポリマーは過酸化水素、m-クロロ過安息香酸によりスルフィド、スルホンに酸化された。
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