研究概要 |
2,5-ビス(ジシアノメチレン)-2,5-ジヒドロフラン(TCNF)の重合挙動を調査した。TCNFはラジカル、イオン開始剤で単独重合しないが、スチレン(St)とはラジカル交互共重合することがわかった。重合反応性への構造の効果を明らかにするために、スチレンと交互共重合するアクセプタアーモノマー、2,5-ビス(ジシアノメチレン)-2,5-ジヒドロチオフェン(TCNT)、とのTCNF-TCNT-St系の三元共重合を検討した。その結果、TCNFはTCNTよりも低反応性であることが明らかになった。また、TCNFあるいはTCNTへのAIBNラジカルの付加速度の測定からもこの結果は支持された。重合反応性の違いは、ベンゼノイド構造とキノノイド構造のエネルギー差で説明できることを示した。 新規電子供与性キノノイドモノマーとして室温で結晶として単離できる2,5-ビス(1,3-ヂチオラン-2-イリデン)-2,5-ジヒドロチオフェン(DT)を合成した。DTは酸素存在下でのみ重合が起き、開環単位を含む3種類の構造単位を有するポリマーが生成する事を見いだした。この重合は今までのキノノイドモノマーにない新しい重合である。 キノノイドモノマーの一種と見なされる1,4-ジカルボニル1,4-ジヒドロナフタレン(DN)を脱気したベンゼン中、insituで発生させ、ベンゾキノン類(2-ドデシルチオ-p-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジt-ブチル-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン)及びべンゾキノンジイミン類(N,N-ジエトキシカルボニル-p-ベンゾキノンジイミン、N,N-ジベンゾイル-p-ベンゾキノンジイミン、N,N-ジフェニル-p-ベンゾキノンジイミン)と反応させると、交互共重合が起き芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリアミドが生成することを見いだした。各ポリマーの生成はモデル化合物を合成し、それらのスペクトルと比較することにより確認した。芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリアミドを合成するための新しい高反応性のモノマーとしてのキノノイドモノマーが有用であることが分かった。
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