研究概要 |
本年度は,高融点(>100℃)を有する生分解性高分子の合成と物性測定を主に行ったが,一部すでに生分解性に関するデータも得られている.用いた主なモノマーは_L-ラクチド(_L-LA),(R)-β-ブチロラクトン[(R)-β-BL],(R)-3メチル-4-オキサ-6-ヘキサノリド[(R)-MOHEL],ε-カプロラクトン(CL),そして環状デプシペプチドの_L-3,_<DL>-6-ジメチル-2,5-モルフォリンジオン(_L-DMO)である._L-DMOは_L-アラニンと_<DL>-2-ブロモプロピオニルブロミドとから合成したが,他のモノマーは市販品(または提供品)を精製して用いた. _L-LAと(R)-β-BLの各ホモポリマーは高融点(170〜180℃)を有するが,それらの固くて脆い物性や緩慢な生分解速度を改善する目的で,これらモノマーと(R)-MOHEL,CL,および_L-DMOとのランダムコポリマー(_L-LAとCLの組合せではブロックコポリマーも)を合成した._L-LA/_L-DMO,_L-LA/CL,_L-LA/(R)-MOHEL,および(R)-β-BL/CLのランダムコポリマーではいずれも,_L-DMO,CL,(R)-MOHELの共重合量が約20mol%以下のとき高融点のポリマーが得られた.また,これらコポリマーのガラス転移温度はほぼ0℃以下となり,_L-LAまたは(R)-β-BLホモポリマーの脆さが改善され,柔軟性に富むポリマーであることが判明した. 酵素(エステラーゼ,プロテアーゼなど)や活性汚泥によるこれらコポリマーの生分解性を調べたところ,いずれも_L-LA(または(R)-β-BL)ホモポリマーに比べ分解性が大きく改善された.特に,_L-LA/_L-DMOコポリマーの場合,_L-LAホモポリマーの機械的(引張強度など)および熱的特性をほとんど低下させることなく,生分解性に優れた材料であることがわかった.今後,これらコポリマーを中心に検討を行い,さらに物性と生分解性とのバランスがとれた高分子の開発を目指す予定である.
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