本研究では二次元的にひろがった種々の側鎖基(アルキル基)をもつ溶媒可溶性のシリコンネットワークポリマーを合成し、電子線レジスト材料としての感受性について検討を行うことである。光分解の場合は、励起状態が架橋部にトラップされ光分解量子収率が減少する。イオンラジカルを経る放射線分解反応においては小員環ラジカルイオンの生成が予測され、一次元のポリシランとは異なった分解挙動が期待される。 平成10年度では、平成9年度で得られた側鎖にn-プロピル基、n-プチル基、n-ヘキシル基を有するネットワークポリシランについて放射線感受性を検討した。電子線レジスト材料としての性能の検討を行うために必要となる基礎的データであるラジカルイオン種について注目し、放射線照射により生成するラジカルイオン種を低温剛性溶媒法による吸収スペクトル、ESRなどを用いて放射線感受性を検討した。 (このラジカルイオン種の測定の際、平成9年度で購入した分光光度計を用いて行った。) イオンラジカルを経る放射線分解反応においては小員環ラジカルイオンの生成が予測されていたので、吸収スペクトル、ESRの測定を行ったところ、ネットワークポリシラン中には、5員環、6員環が存在していることが明らかとなった。また、ネットワークポリシランのラジカルイオンの吸収スペクトルは紫外、可視、近赤外までと幅広く、いくつかの環状ポリシランの存在が示唆された。さらに、ネットワーク構造と一次元構造の感受性の違いを検討した。
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