研究概要 |
シリコン骨格次元およびサイズの制御された有機シリコンナノクラスターを合成し,その光・電子物性における量子サイズ効果を明らかにすることを目的した研究を行った。有機シリコンナノクラスターの合成は,テトラクロロシランをモノマーとして用いたマグネシウム金属による重合反応によるシリコンクラスターの形成と,ハロゲン化アルキルの重合終了時の添加により形成されるGrignard試薬とシリコンクラスターとの反応によって行った。有機シリコンナノクラスターは,シリコンクラスター核を有機置換基が取り囲んだ構造により,種々の溶媒に高い溶解性を示した。合成したポリマー固体のCP-MAS^<29>SiNMRにおいては,4つのSiに結合したSi原子の存在が示された。これは,合成された有機ケイ素ポリマーが,3次元的なケイ素骨格を有することを示唆するものである。また,有機シリコンクラスターの遠赤外スペクトルおよび分子軌道法(MNDO法)により計算した環状ケイ素化合物に対するスペクトルの比較からは,有機シリコンナノクラスターのケイ素骨格は,ケイ素4,5,および6員環からなるアモルファス構造であることが示された。有機シリコンナノクラスターの光物性におけるサイズ効果を検討するために分別沈殿を行い種々の分子量の試料を得手,それらの光・電子物性におけるサイズ効果を検討した。有機シリコンナノクラスターは,1nmから2nm程度の大きさを有し,その光物性においては量子サイズ効果による光学的バンドギャップの変化が顕著に現れた。また,シリコンクラスターの光学的バンドギャップは,サイズの増加とともに減少し,無機系シリコンクラスターの値へと漸近した。有機シリコンナノクラスターは,これまでの有機ポリシランと無機シリコンとの間のギャップをうめる光物性を示した。
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