本研究は従来にない高いイオン伝導度を発現すると期待されるトポロジー的に新規なポリエーテル/塩ハイブリッドの合成を目的としている。 典型的なイオン伝導性高分子であるポリエーテル類に塩構造を共有結合で導入したハイブリッドは、新しい特性を持ったイオン伝導性マトリックスになる。この知見を基に平成9年度では、ポリエーテル類と塩類のハイブリッド化をさらに進め、トポロジカルに異なる種々の誘導体を合成した。バルクイオン伝導度を測定した結果、構造、特に系のガラス転移温度がイオン伝導度を大きく支配していることを確認できた。また、末端の塩構造に要求される特性は、高い解離能を有し、ガラス転移温度を高める効果が少ないことであった。さらにこれらを考慮し、ポリエーテル/塩ハイブリッドを共有結合でつなげ、分岐状オリゴマーあるいは直鎖状ポリマーの合成を進めた。高分子化に伴い系は硬くなるものの、高いセグメント運動が保たれる系も見出されており、今後さらに低分子のハイブリッドを添加するなど、系のイオン伝導度を高める工夫をすすめ、電気化学的な反応場としての応用に供する計画である。
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