会合高分子とは、部分的に疎水化された水溶性会合高分子のことである。ポリエチレンオキシドを主鎖にした、片末端疎水基、両末端疎水基(テレケリックポリマー)、鎖上で周期的に疎水基をもつ周期会合高分子、両親媒性ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、などをモデル高分子とした。これらの高分子は水中でミセルを形成したり、ミクロ・マクロ相分離、ゲル化などを含む極めて特徴的な相構造をしめす。本課題では、会合高分子のゾル・ゲル転移に注目し、(1)相分離との競合、(2)ゲル化点近傍での架橋構造、(3)ネットワーク中の架橋点の運動性と粘弾性、(4)分子内ミセル形成と分子間架橋が競合する現象、(5)界面活性剤の添加効果、(6)高分子のコンフォーメーション転移とゲル化現象の相関、(7)異種高分子が混合して形成される2成分高分子ネットワーク、等について統計力学的理論解析とモンテカルロシュミレーションを相補的に行うことにより、以下のような成果を果たす。まず、ゾル・ゲル転移、マクロ・ミクロ相分離、臨界ミセル点を含む相図を広い温度濃度領域で高速で導出できる計算法(会合高分子溶液理論)を確立し、様々な実験結果と比較検討した。特に、ゾル・ゲル転移線から架橋構造(特に多重度)を推定する「修正エルドリッジ・フェリー法」を開発し、ポリピニルアルコール等のゲルに適用した。また、有効鎖の数えあげによりゲルの弾性率を求める方法を開発した。テレケリックポリマーの場合にループ鎖とブリッジ鎖の割合を高分子濃度や温度の関数として求め、ネットワークの大域的構造のキャラクタリゼーション手法(鎖の会合形態の分類)を提案した。これにより、フラワーミセル出現条件を解明した。以上のすべての問題に関連した溶液の空間構造を分子レベルで詳細に検討するため、モンテカルロ・シュミレーションを行った。
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