重合反応誘起相分離の温度履歴依存性について知見を得ることを目的として、2-クロロスチレン・モノマー/ポリスチレン混合系(可塑剤フタル酸nジブチルを10wt%添加)に対し、温度を2段階に変えて反応・相分離を行わせた。すなわち一段目温度T_1で時間t_1の間反応・相分離させた後、二段目温度T_2へ温度ジャンプさせて相分離挙動を解析した。 実験方法としては、時分割光散乱による相分離過程のダイナミックスの測定、電子顕微鏡写真撮影による相分離構造モルフォロジー変化の観察、ゲル浸透クロマトグラフィーによる反応率の時間変化の測定を行った。T_1=130℃、T_2=160℃、t_1=3hとした場合の2段階温度ジャンプでは、2段目ジャンプを行った時点で重合生成物であるポリ2-クロロスチレンを多く含有する相は球形ドメインを形成していたが、2段目ジャンプ直後速やかに連続相構造を形成し成長することが見いだされた。一方、t_1=0h(160℃における通常の一段ジャンプ)ではポリ2-クロロスチレンを多く含有する相は、連続相を形成することなく、球形ドメイン構造のまま粗大化した。また、t_1を変えて行った時分割光散乱測定から、一段目の反応率が70%程度で二段目へジャンプした場合(t_1=0.5h)は相分離速度が、より反応率が高い時点でジャンプした場合に比べ、二段目の相分離速度が遅くなることが見出された。これらより重合反応誘起相分離では系のモルフォロジーならびに相分離挙動が温度の履歴が大きく依存することが明らかとなった。
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