2-クロロスチレン/ポリスチレン混合系(組成比50/50)を試料とし、クロロスチレンのラジカル重合反応により誘起される相分離の温度履歴依存性を電子顕微鏡、時分割光散乱法を用いて測定し、解析を行った。温度履歴として、2段階の反応・相分離温度(温度T_1でt_1時間反応・相分離後、温度T_2へジャンプ)を与えた。160゚Cで重合反応誘起相分離を行わせた場合、重合生成物を多く含む相はドロップレットのみを形成するが、T_1=130℃からT_2=160℃へ変化させた場合t_1≧50minではドロップレットから連続相への相分離構造変化が観察された。電子顕微鏡の画像解析より、重合生成物を多く含む相の相体積分率は160℃へジャンプ後増大することが見出されたが、ゲル浸透クロマトグラフィーによる反応率測定結果より、160℃と130℃とにおける反応率の時間変化には大きな違いがないことが見出された。これより、相構造変化は重合生成物が低温でより多く海相に蓄積されやすいために起こることが示唆された。相構造変化は160℃へジャンプ後30min以内に起こった。T_2を150℃に下げると、60minではまだドロップレット構造を残し、80minで相構造変化が見られた(t_1=1hの場合)。相構造変化の有無に伴い、時分割光散乱で測定された散乱光強度の時間変化にも違いが見られた。相構造変化が見られない場合(短いt_1)ピーク散乱光強度I_mは160℃へジャンプ後160℃におけるI_<m-t>曲線へ漸近するが、相構造変化がある場合I_mはジャンプ後急速に増大し160℃におけるI_<m-t>曲線を越える。T_1を135℃に上げると160℃へジャンプ後のI_mの立ち上がりの仕方はt_1=160min〜170minで変化する。すなわち、一段目温度が高くなると重合生成物が海相へ蓄積しにくく相構造変化に必要な蓄積量に到達するのに長時間を要することがわかった。
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