重合反応誘起相分離の温度履歴依存性を知ることを目的として、温度T1でt1時間反応・相分離させた後に温度をT2ヘジャンプさせたときの相分離挙動を時分割光散乱法ならびに電子顕微鏡を用いて測定した。160゚Cのみで重合反応誘起相分離を行わせた場合、重合生成物を多く含む相はドロップレットのみを形成するが、T1=130°CからT2=160°Cへ変化させた場合t1【greater than or equal】50minでは、T2ヘジャンプ後ドロップレットから連続相への相分離構造変化が起こることが見出された。相分離構造変化の有無に対応して、散乱光強度の時間変化にも違いが見られた。すなわち、t1が短く、相構造変化が起こらない場合、ピーク散乱光強度ImはT2=160℃ヘジャンプ後、一定温度160℃で得られたIm-時間t曲線へ漸近するが、t1が長く、相構造変化が起こる場合Imはジャンプ後急速に増加し、160゚CにおけるIm-t曲線を越えて増大する。T2を減少させても、相構造変化を引き起こすのに必要な最小のtlは変わらず、ジャンプ後の相構造変化が起こるまでの時間が長くなるだけであった。一方T1を増加させると、相構造変化を引き起こすのに必要な最小のt1の値は大きく増加した。以上の結果は、高温では粘度が低く、相分離が反応に比べ十分速いのに対し、低温では粘度が高く、反応が相分離に比べ速くなるためであると説明された。すなわち、相構造変化は、1段目温度における、重合生成物の海相への蓄積が原因であると考えられた。以上、重合反応誘起相分離は顕著な温度履歴依存性を示すことが確認され、温度履歴依存性を解析することにより重合反応誘起相分離の機構について重要な知見がえられること、さらには新規な相分離構造制御の方法として有望であること
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