昨年度、秩序-無秩序転移(ODT)の条件を決定した組成比がほぼ1:1のポリスチレン-ポリ2ビニルピリジン(SP)2元ブロック共重合体のうち、重水素化ポリスチレン-ポリ2ビニルピリジン2元ブロック共重合体(DP-20:分子量36万)の溶液を用いて、ODT近傍の無秩序状態で粘弾性の検討を行った。その結果、昨年までのSPの結果と同様に粘性パラメータは振動実験、定索流動実験の結果が共に構成成分単体(両者はほぼ等しい)の値とほぼ等しいこと、一方振動実験で得られる弾性パラメータは、構成成分単体の値(両者はほぼ等しい)よりも2ないし3倍大きな値を示すが、定常流動実験から得られる弾性パラメータの値は構成成分の値にほぼ等しいことが明らかになった。濃度を変化させて行った中性子小角散乱の測定からは、ODTから離れてもほとんど散乱に変化がない、すなわちかなり広い濃度範囲で揺らぎが存在することが示唆された。さらに粘弾性測定を行ったのと同一条件下での定常流動下の中性子小角散乱実験において、散乱の異方性がないことから流動下でも構造は形成されないことが明らかになった。これらの結果は、揺らぎの効果は粘性パラメータには影響しないが、振動実験で得られる弾性パラメータを増加させ、定常流動では流動により揺らぎが抑制されると考えれば理解可能である。ただし、その場合には散乱関数にもより均一な状態への変化が期待されるが、そのような変化は残念ながら検知できなかった。
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