分子量約1万から100万で分子量分布が狭く、組成比がほぼ1:1のポリスチレン-ポリ2ビニルピリジン(SP)2元ブロック共重合体を用いて、バルク状態から、共通良溶媒中で高分子濃度が数%の準希薄溶液にわたる広い濃度範囲で秩序無秩序転移(ODT)の濃度と分子量依存性を、中性子小角散乱測定と動的粘弾性測定から決定した。その結果、低分子量試料のバルク状態と非常に濃厚な溶液では揺らぎの効果を考慮した理論で、高分子量試料の準希薄領域では排除体積効果を考慮した理論でそれぞれ理解できることがわかった。しかし両者の間には広い遷移領域、ないしは別の領域が存在するようである。 上記のように決定したODTの条件を基に、ブロック共重合体溶液を用いて、ODT近傍の無秩序状態で粘弾性の検討を行った。その結果、粘性パラメータは振動実験、定常流動実験の結果は共に構成成分単体(両者はほぼ等しい)の値とほぼ等しいこと、一方振動実験で得られる弾性パラメータは、構成成分単体の値(両者はほぼ等しい)よりも大きな値を示すが、定常流動実験から得られる弾性パラメータの値は構成成分の値にほぼ等しいことが明らかになった。 また同じく溶液系の無秩序状態で行った重水素化ポリスチレン-ポリ2ビニルピリジン2元ブロック共重合体(DP-20)溶液の中性子小角散乱の測定からは、かなり広い濃度範囲で揺らぎが存在することが示唆された。この系においても粘性パラメータは振動実験と定常流動実験でほぼ等しくなったが、弾性パラメータは上記と同様な違いを示した。さらに定常流動下の中性子小角散乱実験から流動下でも構造は形成されず、散乱関数にほとんど変化のないことが明らかになった。 これらの結果は、揺らぎの効果は粘性パラメータには影響しないが、振動実験で得られる弾性パラメータを増加させ、定常流動では流動により揺らぎが抑制されると考えれば理解可能である。
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