ポリビニルアルコールの水とグリセリン混合溶媒系および水とジメチルスルホキシド混合溶媒系でのゲル化について、共焦点レーザー顕微鏡、光散乱、X線散乱、中性子散乱測定により、ゲルの構造とその形成過程を調べた。これら系では低温で作製したゲルは透明であるのに、高温で作製したゲルは白濁している。この結果は定性的には、結晶化による高分子網目の形成と液-液相分離が競合して起こると考えると説明がつく。本研究ではこの推論を定量的に確かめた。 高温均一溶液から、25Cに急冷した直後からの時間分割光散乱測定を行ない、ゲル化に先だってスピノーダル分解型の相分離が起こっていることを直接確かめた。光散乱測定が不可能な白濁試料の相分離構造は共焦点レーザー顕微鏡観測により決定した。それより、相分離構造はゲル網目が生成したあとも、その大きさを成長させ、初期のサイズに比べ3〜4倍の大きさとなることが明かとなった。 さらに小角中性子散乱測定によりゲルの架橋点である微結晶の生成過程を調べ、目視観測より予想したこの系のゲル化において「結晶化による高分子網目の形成と液-液相分離が競合して起こる」という仮説を定量的に証明した。 溶媒による構造形成過程の相違も調べ、これらの結果を基に、PVAゲルの階層構造を生成の機構についてまとめ、構造制御の基礎を確立した。
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