本研究では、二成分系ポリマーブレンドの相分離に伴って時間と共に発展していく濃度ゆらぎの空間的対称性を直線偏光の照射によって破り、異方性相分離の誘発を試みた。このようにして誘起した異方性の生成機構、相分離動力学を明らかにし、ポリマーブレンドの新規モルフォロジーの制御法を確立した。 実験系として、下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリスチレン/ポリ(ビニルメチルエーテル)(PS/PVME)を用い、直線偏光の照射に対して選択的に相分離を誘起できるために、PS鎖上にアントラセンまたはtrans-Stilbeneをラベルした。直線偏光照射下で、アントラセンの二量化(架橋)反応やStilbeneの異性化反応が直線偏光の電場(E)に対してcos^2θの確率で起こり、この分布に従って相分離が誘発される。種々の時間間隔にわたり、ブレンドを照射し、時間発展したモルフォロジーを観測・解析した。得られた結果は次の通りである。 [1] 架橋の場合では、偏光の方向(E)に沿って相分離が抑制され、(E)と垂直の方向と比べて遅くなり逆に、異性化反応では、(E)と平行の方向では、相分離が速いことがわかった。これはどちらの場合においても(E)と平行の方向では反応がもっとも速く進行することに起因する。また、両方の場合では、モルフォロジーの配向方向が(E)とほぼ垂直になっていることが見られた。 [2] 架橋の場合も異性化の場合も、反応の角度分布があるため、異なった方向に沿って不安定性が異なった速度で伝播する。結果として、ある時刻に観測されたモルフォロジーはこれらの不安定性の干渉の結果であることが無偏光の実験との比較で明らかになった。本研究で得られた一連の結果は、多相系高分子材料の新規なモルフォロジー制御法を示唆している。
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