示差走査熱量計とフーリエ変換赤外分光光度計の同時測定(DSC-FTIR)により、n-アルカンの相転移における緩和過程の測定ならびにポリエチレンテレフタレートの相転移過程の解析を行った。 n-アルカンとしてヘキサトリアコンタンならびにオクタコサンを用いて、溶液から再結晶化した単結晶と溶融状態から冷却して得た多結晶の相転移(固相転移ならびに融解)を解析した。多結晶体は準安定状態である回転相のコンホメーション秩序が凍結した状態にあり、固相転移では凍結秩序の緩和によるコンホメーションの秩序象が観察された。 ポリエチレンテレフタレートの溶融状態ならびにガラス状態からの結晶化過程を解析した。DSC-FTIR、DSC-SRXRD、DSC-XRD同時測定の結果から、PETの結晶化メカニズムは次のように考えられる。溶融状態ならびにガラス状態からの結晶化は基本的には次の様な秩序化の順番によってもたらされる。(1)π電子相互作用によるベンゼン環同士のスタックと分子鎖のサイドバイサイドの配向、(2)長距離の密度ゆらぎの生成、(3)エチレン鎖のコンホメーションの秩序化、(4)乱れた短距離秩序の形成、(5)b軸方向の秩序化、(6)a軸方向の秩序化とベンゼン環とエチレン鎖のコンホメーションの整合化、(7)長周期構造の形成。これらの秩序化は、(1)と(2)の過程は結晶核形成過程、(3)〜(5)が結晶化発熱の主な原因、(6)と(7)の過程は二次結晶化と呼ばれている過程と対応する。
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