まず、平成9年度初頭に高分子ミセル内核に内包された薬物を物理的・化学的に詳細にキャラクタリゼーションする方法が確立できた。さらに、高分子ミセルが内包する抗ガン剤アドリアマイシンを化学的結合量、物理的吸着量を個別に変えて高分子ミセルに封入する方法論を確立した。化学的に結合したアドリアマイシンはそのin vitro殺細胞作用がアドリアマイシンの1/1000程度であることから、専らミセル形成のための疎水性内核として働き、抗ガン作用には関係していないと考えられた。アドリアマイシンを物理的に封入する際に、2量体が生成することがわかった。この2量体はin vitro殺細胞作用がもとのアドリアマイシンに比べて1/100程度と低いことがわかっており、in vivoにおいて抗ガン作用の主体はアドリアマイシンであると考えられた。 内包された薬物が詳細にキャラクタリゼーションされた高分子ミセルを用いて殺細胞活性評価及び、細胞内分布を蛍光顕微鏡により観察した。細胞数が指数的に増加している状態と細胞がconfluentになり細胞数が増えない状態のどちらの測定条件に置いてもADRと高分子ミセル(物理的に内包した量で比較)は同程度の殺細胞活性を示した。一方、細胞内分布の観察では高分子ミセルの場合はADRの約1/10ほどの量しか核で見られなかった。この事は高分子ミセルのうちこの観察では見えてない部分があって殺細胞活性に関係していることを示唆した。
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