光・電子集積回路(OEIC)用ポリイミドの開発

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09651004
• 研究機関: 東京工芸大学
• 研究代表者: 松本 利彦 東京工芸大学, 工学部, 助教授 (50181780)
• キーワード: ポリイミド / 光・電子集積回路 / 無色透明ポリイミド / 脂肪族ポリイミド / 誘電率 / 屈折率 / 分子軌道計算 / 電荷移動

研究概要

平成11年度は、1)全脂肪族ポリイミドを合成して物性を評価する、2)ポリイミド着色の起源を量子化学計算から明らかにする、の二つに焦点を絞って研究を遂行した。以下に成果(研究実績)の概要を述べる。
1)昨年度(平成10年度)、多脂環構造モノマー、具体的にはビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BHDA)と2,5-(ビスアミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(BBH)を用いた全脂肪族ポリイミド合成に成功した。今回、重合条件の最適化と得られたポリイミドフィルムの物性評価、および新たな多脂環構造酸二無水物とBBHとの重合を行った。重合条件を選べば強靭で無色透明なポリイミドを得ることが可能であることがわかった。これらのポリイミドは有機溶媒に可溶でイミド化率はほぼ100%である。また、屈折率は1.522で複屈折率は0である。屈折率の値から誘電率は2.55と見積もられ、ポリイミドとしては極めて低い。耐熱性低誘電率材料はCPUの高速化を図る上で不可欠である。全脂肪族ポリイミドがその候補の一つとして注目された。
2)芳香族モノマーから合成される全芳香族ポリイミドは黄色〜褐色に着色しているため、光学分野での利用が制限される。着色の原因が電荷移動(CT)であることは1970年代初頭から知られていたが、分子間CTか分子内CTかが議論の分かれるところであった。昨年度につづいて、モデル化合物について半経験的分子軌道法(MOPAC、MOS-F)によって吸収波長を計算し、実測値と比較した。計算結果を解析すると、全芳香族ポリイミドの着色は、HOMO-LUMO間のπーπ*遷移が47-49%寄与する分子内CTによることがわかった。一方、BBHと芳香族酸二無水物から得られる半芳香族ポリイミドでは、光吸収がHOMOから13準位低い分子軌道HOMO-13からLUMOへのn-π*遷移が支配的な光誘起分極によることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] K.Feng,M.Tsushima,T.Matsumoto,T.Kurosaki: "Synthesis and Properties of Novel Photosensitive Polyimides Containing Chalcone Moiety in the Main Chain"J.Polym.Sci.Part A: Polym.Chem.Ed.. 36. 685-693 (1998)
• [文献書誌] T.Matsumoto,C.Feger: "Optical Properties of Polyalicyclic Polyimides"J.Photopolym.Sci.& Technol.. 11. 231-236 (1998)
• [文献書誌] T.Matsumoto,K.Nishimura,T.Kurosaki: "Ladder-type Polyimides Based on Diaminodibenzofurane"Europian Polymer Journal. 35. 1529-1535 (1999)
• [文献書誌] T.Matsumoto: "The Origin of Coloration in Aromatic Polyimides-An Approach from Quantum Chemistry-"J.Photopolym.Sci.& Technol.. 12. 231-236 (1999)
• [文献書誌] T.Matsumoto: "Nonaromatic Polyimides Derived from Cycloaliphatic Monomers"Macromolecules. 32. 4933-4939 (1999)
• [文献書誌] T.Matsumoto: "Semiaromatic Polyimides Based on Bis(aminomethyl)bicyclo[2.2.1]heptane"High Performance Polymers. 11. 367-377 (1999)
• [文献書誌] T.Matsumoto,T.Kurosaki: "Advances in Polyimides and Low Dielectric Polymers"Society of Plastics Engineers,Mid Hudson Section. 91-115 373 (1999)
• [文献書誌] T.Matsumoto: "Research Developments in Polymer Science"Transworld Research Network (in press). (2000)