研究概要 |
アルコール水溶液の選択透過性に及ぼす膜構造因子を親水性高分子と疎水性高分子の化学的修飾と物理的構造建築の観点から検討した。親水性高分子としては,キトサンを選択し,膜の化学的,物理的構造の水選択透過性に及ぼす影響を,キトサンのN-アルキル化度およびN-アルキル基の炭素数を変え検討し,置換度および炭素数は水選択透過性に著しく影響することが明らかになった。また,メチルメタクリレート-g-ジメチルシロキサン共重合体膜は,ミクロ相分離構造を有し,この共重合体組成により,水選択透過性とアルコール選択透過性を示し,各成分の連続構造が関係していることが明らかとなった。アルコール選択透過膜であるポリジメチルシロキサン(PDMS)膜の選択透過性の向上を目的とし,高分子添加剤を合成し,PDMS成分を含むフッ素系ブロック共重合体を添加した膜は,PDMS膜より高いアルコール選択透過性と高い透過速度を示し,その膜構造が明らかにされた。 芳香族/脂環族炭化水素混合物の代表的なものとしてベンゼン/シクロヘキサン混合液のパ-ベ-パレーション法における透過分離特性を種々の高分子膜の化学的,物理的構造の観点から検討し,透過分離機構についても検討を加えた。ポリメチルシロキサンにメソゲン基を付加した側鎖型液晶性高分子(LCP)膜は,ベンゼン選択透過性を示し,透過温度によりLCP膜の状態が著しく変わり,その透過分離機構に大きな違いがあることがわかった。また,架橋ポリアルキルメタクリレート系膜のベンゼン選択性を示したが,架橋剤の量と種類によりその選択性が著しく異なっていた。供給液による膜の膨潤を制御することにより選択透過性を向上するため,親水性高分子のキトサンをベースにしたベンゾイル化キトサン膜が調製され,ベンゼン選択透過性が改善され,膜の親水性-疎水性バランスの重要性が明らかにされた。
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