気体力学における極非平衡現象はその典型として、衝撃波及びクヌッセン層において現れる。(1)グラッドの13モーメント方程式の直接的拡張である20モーメント及び35モーメント方程式を定常1次元の衝撃波の解析に適用した。3次元の微分方程式のダイレクショナルフィールドの詳細な検討を行い、衝撃波のマッハ数が増加すると、衝撃波下流のマッハ数が1/√<γ>(γは比熱比)となる付近で解に不連続性が現れた。解を接続して衝撃波の構造を求めたが、その特異的な性質はボルツマン模型方程式の衝突頻度を増加させて行ったときの特異性と一致した。此の結果は第2回航空宇宙科学技術アジア会議で発表した。(2)5次までの全てのモーメントを含む56モーメント方程式までを、衝撃波管問題に適用してその解の性質とモーメント方程式の打ち切り法について調べた。極非平衡気体中における高次モーメント量の振る舞いが明らかになった。強い衝撃波の解析には人工粘性項を導入した。解の超音速部分に特異的な振る舞いがが現れた。これらの結果については第22回国際希薄気体会議に投稿中である。(3)高次流体力学方程式系に対する一般化された滑り境界条件を導出し、これをスーパーバーネット方程式等に適用してチャップマン・エンスコッグ法の摂動解の限界について考察した。此の結果は第21回国際希薄気体会議で発表した。蒸発凝縮問題への応用は高次流体力学方程式がこの様な極非平衡流れへ応用可能なことを示した。此の結果は、日本機械学会年会で発表予定である。(4)衝撃波、境界層、クヌッセン層を含む平板の先端境界層流れと斜め衝撃波の干渉のモンテカルロ法による数値シミュレーションを行った。これは第21回国際希薄気体会議で発表した。高次流体力学方程式による解析は現在進行中である。
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