人工衛星の大型化や高機能化あるいは国際宇宙ステーション計画などに伴って、エネルギ源としての太陽電池は高率的・大規模化してきた。このように軽量で剛性が小さく固有振動数が低い柔軟宇宙構造物は、機械的あるいは熱的な外乱によって容易に変形や振動を生じ、場合によっては機能に支障をきたす。本研究ではロールブランケット型のソーラーアレイを対象として、太陽ふく射加熱による熱負荷の下での、熱弾性連成応答を効率的に予測する手法の確立を目的とした。まずソーラーアレイを、構造の本質的な特徴を損なわないように配慮した上で、張力を受けて安定化された膜と、この張力を支持するために圧縮荷重を受けるはり構造とでモデル化した。アレイ構造全体としての座屈荷重や固有振動数に関する特性方程式を解析的に定式化し、座屈モードや固有振動モードについても解析解を導出した。さらに、日陰からの食明けを模擬した太陽ふく射加熱を受けた場合の熱変形挙動を解析的な手法で明らかにした。ソーラーアレイの面外方向から一様なふく射加熱を受けた場合の応答を、まず準静的な仮定の下で解析的に求め、構造の幾何学的な非対称性に起因する曲げねじり連成効果により大きなねじれ変形が起こることを示した。さらに慣性力の効果を含め、同じ条件の下での動的な熱変形に対する解析的な解を定式化して、膜の張力の値によっては、発生する振動の卓越モードが時間とともに変動していく複雑な挙動を示すことを明らかにした。このような解析解は構造材料の選択に伴う物性値の変更や、幾何学的な寸法の変更に対して容易に対応でき、また系の挙動を支配するパラメータを明らかにできる。また、実験室規模で実施可能な実験システムを製作し、加熱ランプを用いたふく射加熱実験を実施してソーラーアレイモデルの非定常な熱変形挙動を測定した。結果の一部は解析に基づく計算値と比較し、理論解析の妥当性を検討した。
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