本研究は、構造を有する材料の破壊挙動をより包括的に扱えるメソスケールの計算力学的手法の構築を第1の目的とした。すなわち、計算不連続体力学モデルによる単相固体の三次元メソ解析アルゴリズムを、繊維、粒子(特別な場合としてボイド)などを含む多相材料一般を対象とし、粒界および粒内破壊あるいは変態塑性などを考慮した計算に拡張した。第2の目的として、それらのメソスケール構造/挙動が、構成方程式および破壊靭性などのマクロ物性に及ぼす影響を定性的、定量的に把握するとともに、その結果に基づいて均質化法、損傷力学などのマクロなモデル化を評価、改良につながる知見を得た。 平成9年度においてはまず、構造を有する材料の一例として、単相固体(多結晶脆性固体)を対象とし、粒界および粒内破壊を考慮した三次元メソ解析アルゴリズムを構成した。続いて、マイクロインクルージョンを含む二相固体を対象とし、粒界および粒内破壊あるいは第二相粒子の変態塑性などを考慮した三次元メソ解析アルゴリズムを構成した。さらに、これらを用いて数値シミュレーションを行ない、計算手法の正当性について考察した。 平成10年度においてはまず、単相固体および二相固体が予めマイクロクラック損傷を伴う場合のマクロ弾性定数計算に関するメソ解析を行ない、既存の均質化法などによる理論解と比較検討した。続いて、単相固体および二相固体の損傷発展に関する非定常メソ解析を行ない、既存のマクロ連続体損傷力学モデルの評価、改良につながる知見を得た。最後に、単相固体および二相固体のR曲線(亀裂進展抵抗曲線)挙動に関するメソ解析を行ない、メソスケールの構造とマクロ破壊靭性の関連について考察した。三次元メソ解析アルゴリズムの構成は主として研究代表者が、プログラミングと数値計算は主として研究分担者が担当した。これらの研究により、材料破壊におけるマクロ・メソ相関問題に関する計算力学的アプローチの一手法を確立するとともに、構造を有する固体の損傷・破壊現象に関するいくつかの知見を得た。
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