本研究の目的は、き裂まわりの塑性変形を数値計算により、忠実に追跡しながら、物理モデルとして受け入れ易いエネルギー解放率(G値)を用いて、疲労き裂も含めたき裂の問題を、非線形数値破壊力学の立場から検討する。さらに、J積分やCODに代わる、より普遍的な靭性パラメータを提案し、これを工学的問題に応用するための筋道を立てることである。 平成10年度においては、以下の研究成果が得られた。 (1) 平成9年度に開発された、界面要素を用いたき裂進展解析法を動的き裂進展にも適用できるように拡張し、新しく動的き裂進展解析法を開発した。この解析法は、一定の表面エネルギー密度G_<cr>を有するポテンシャル関数に基づき導かれた界面要素をき裂進展面に配置し、表面エネルギー密度G_<cr>に相当するエネルギー散逸を伴いながらき裂が動的に進展する過程が解析できるようにしたものである。 (2) 上記解析法を弾性板中におけるき裂伝播解析に適用し、予荷重の増加に従いき裂進展速度が上昇し、Rayleighの表面波速度に収れんするという現象が再現された。 (3) シャルピー衝撃試験を静的問題および動的問題として解析した結果、き裂面間の相互作用が同じであれば材料の降伏応力が上昇すると、強度は上昇する反面、延性と吸収エネルギーが低下することが示された。
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