本研究は、スクリュー式スラスターと翼を用いる水中ロボットの従来の運動制御手法に代わる胸鰭運動装置を使用した新しい制御方法を考案することを目的としている。スラスターでは細かな力を発生することが難しく、ロボットが海中ステーションにドッキングする場合やロボットが浮遊状態でマニュピュレータを使う場合のような、精度良い位置決めが要求される運動制御に不向きである。ブラックバスの胸鰭の観察から、次のことがわかった。1)ブラックバスは静止、低速時の細かい運動で主に胸鰭を使い姿勢を保持している、2)バスの胸鰭の動きは大きく別けてフェザリングとリ-ド・ラグ運動からなる、3)それらの2つの運動は同じ振動数のSIN関数を使って表現できる、4)胸鰭は位相差を変化させ発生する力を調節できる。以上の結果をもとに胸鰭の動きを模擬できる胸鰭運動装置を開発した。それと同時に、非定常渦格子法を用いた数値シミュレーション技術を開発した。次に、胸鰭運動装置を搭載した2次元運動(前後左右)が可能な魚型水中ロボットを製作し、1)胸鰭運動装置単独での流体力実験、2)魚型水中ロボットに前後進・旋回させる操縦性能試験、3)ロボットの先端にポールを付け水中に固定されたポストにドッキングさせる運動制御実験、を行った。その結果、1)非定常渦格子法は胸鰭運動装置に加わる非定常流体力をかなりよく表現できる。2)魚型水中ロボットはその場回頭や横移動が可能であること、3)魚型水中ロボットは与えられた経路を潮流中であっても追従することができる、などの結果が得られた。
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