研究概要 |
放射性廃棄物固化体の一つである硼珪酸塩ガラスの安定性を評価するために,水熱条件下でガラス固化体の総晶化過程を詳細に調べた.対象とした固化体の組成は,現在核燃料サイクル機構のTVF(Tokai Vitrification Facility)において検討されているガラスを基準にして,アルカリ元素成分(Li+K)_2Oとアルカリ土類元素成分(Ca+Mg)0を一定に保ち,Li/KとCa/Mg比を変化することにより決めた.なお,疑似放射性元素として,安定同位体のSrOとCS_2Oを含む.高温(1300℃,1気圧)で作製した各種ガラスを200℃,蒸気圧1.53MPaの条件下で所定時間加熱処理し、生成産物のキャラクタリゼイションを試みた.56日間加熱処理した産物のすべてから沸石鉱物の一つであるポルサイト(pollucite:(Cs,Na)AlSi_2O^6・AlSi_2O^6・H_2O)が確認された.化学組成分析によると,K,Ca,MgがボルサイトのCsを置換する特徴があることが判った.このうち,Mgはポルサイトのみに含まれるのに対して,KとCaはポルサイト以外にカリ長石やCaAl^2(SiO_4)(OH)_4にも含まれる.また,Liの一部はLi_2Si_2O_6として結晶化している.ポルサイトの結晶成長は,NaよりもCsの存在で促進される.生成物における結晶の集合状態は,仮像型と風船型の二つの形態に分けられる.仮像型ではガラス粒子が元の形を保ったまま結晶化が進んでいる.一方,風船型はガラス粒子が熱水に溶解し元の形を失い,中空の球形を示す.生成物の形の違いは,出発ガラスの化学組成と加熱処理時間によって決まる可能性が強い.すなわち,今回の実験の結果によると,Mgを含むガラスの場合,仮像型になる傾向が強い.ただし,この仮像型の形態も加熱時間の増加に伴って,風船型に変わることがある.
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