研究概要 |
粘土鉱物や沸石鉱物は一般的に陽イオン吸収能が極めて大きい。吸収メカニズムは、鉱物表層部の吸着作用または格子の置換作用などによる。本研究では、数種のホウケイ酸塩ガラスを出発物質として、それらを加熱することにより生成する鉱物種を検討し、ガラス構成成分、特にSr,Cs,B,Liの挙動および鉱物中における元素の分布状態を究明した。高レベル放射性廃棄物の地層処分にむけて、使用済み核燃料の固体化としてホウケイ酸塩ガラスが有力な候補に挙がっている。本研究は、地層処分の安全性評価基準構築へ貢献することを目的とする。加熱温度1200℃で作成したホウケイ酸塩ガラスは、Na-Cs-Sr-B-Li-Si-Al-O系より成る。作成したホウケイ酸塩ガラスを粉末状(経20〜30μm)にし、200℃で1.53MPa(蒸気圧)の水熱条件下で所定時間処理した。水熱実験を行った理由は、実際に地層処分を施されたガラス固化体が超長期においては地下水と接触することが十分に想定されるからである。実験により得られた代表的な鉱物は、沸石に属する方沸石(NaAlSi_2O_6・nH_2O)である。方沸石中のNaはCsにより置換され、完全にCsにより置換されるとポルサイトという鉱物種になる。Cs含有量の多い固溶体ほど反応速度は低下する。一方、BとLiは方沸石の結晶化を促進する役割を果たしている。方沸石の格子常数は、48gサイトを占めるSiの割合に依存し、アルカリまたはアルカリ土類元素にはあまり左右されない。ただし、Liを含むガラスから生成した方沸石の格子定数はLiを含まないガラスから生成した方沸石よりも格子定数は大きい。また、結晶構造中の電荷バランスを考慮するとLiは方沸石中の格子を構成していると推察される。一方、Srを含まないガラスから生成した方沸石にはBは固溶せず、Bを含まないガラスから生成した方沸石はSrをほとんど含まない。方沸石にSrを固定するためには、Bの存在が不可欠であると推察される。
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