水に関連した地盤・岩盤の各種物性は電気比抵抗特性からの考察が重要であり、原位置での比抵抗測定を可能にする技術の開発が急務である。本研究では、地盤・岩盤と非接触で測定可能な、電磁誘導現象を利用した測定装置の研究開発を進め、原位置比抵抗測定技術の実用化をはかることを目的とした。 インダクション検層で利用されているフォーカシングの原理を応用し、2つの送信ループを用いる原位置比抵抗測定を提案し、まず、この測定によってどの程度地表付近の影響が除去可能であるかについて、数値実験により検討した。その結果、フォーカシングによって1次磁場が抑えられ地中の応答である離相成分の変化が捉えやすくなること、送受信ループの相対的な配置は1次磁場の抑制のために重要であることが明らかとなった。また、送信ループの半径や、内側・外側2つの送信ループ径の比を変化させることで、地表付近の影響の割合をコントロールできることがわかった。さらに、媒質中を流れる渦電流の分布を求めて、フォーカシングの効果について解釈を深めた。 モデル実験では、食塩水を媒質として応答を測定した。その結果、フォーカシングすることにより、1次磁場の影響を除去し、フォーカシングしない場合には測定できなかった媒質の比抵抗変化を捉えることがわかった。また、フォーカシングを行うことにより、表層の影響を除去できることを確認した。さらに、測定周波数による応答の変化などの検討を加え、原位置比抵抗測定装置を試作した。 野外実験では、電気探査法により地下水環境モニタリング調査が実施されている地域において、本測定手法の有効性を検証した。その結果、送信ループと受信コイルの位置に精度に関して、装置の不完全さが課題として残されたが、原位置比抵抗の値は概略で推定された。
|