鉄鋼製錬の際に副次産物として大量に発生する鉄鋼スラグの新規素材への転換を目的として、特に再利用率の低い転炉スラグや脱Siスラグなどから、単純工程で高収率にFAU型やMFI型などの高機能性ゼオライトを合成するプロセスを探索している。本年度は予備実験として、スラグを磨砕(ボールミルおよび振動ミル)と酸処理によるアルミノシリケート径出発原料の調製の最適条件を検討した。その結果、磨砕により酸処理時の溶脱元素に選択性が発生すること、ゼオライト合成の阻害因子となるカルシウムを完全に除去した活性シリカゲルを迅速に得るためには濃塩酸処理が必要なこと、さらに適当な条件下での希塩酸処理によりアルミノケイ酸ゲルが調製できてSi/Al比の制御ができることがわかった。また、圧力・温度の精密制御機構のあるマイクロ波加熱水熱合成装置を導入し、これを用いることによって、通常の処理方法に比較して格段に短時間かつ高効率に酸処理が行えることがわかった。このようにして高炉スラグから調製されたアルミノシリカ系原料を出発物質に用いて、アルミン酸ナトリウム水溶液中で水熱処理することにより高純度のFAU型(XおよびY型)及びZSM5型ゼオライトを高収率(90%以上)で得ることができた。また、このアルミノシリカ系出発物質を、Al_2O_3、NaF、MgF_2及びMgOと乾式混合した粉末をペレタイズし、800〜1300℃で焼成することにより、様々な化学組成の四ケイ素フッ素雲母からフッ素金雲母も合成することが出来た。これらの合成物は、X線回折測定、熱分析(TG-DTA)、固体^<29>Si-および^<27>Al-MASNMR測定、走査型および透過型電子顕微鏡観察などの手法によりキャラクタリゼーションを行い、結果を総括した報告を専門雑誌へ投稿中である。さらに現在は、様々な条件でのマイクロ波加熱水熱処理による反応を検討している。
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