研究概要 |
リンゴのライプニング型ACC合成酵素遺伝子(Md-ACS1)は基本型(1型)と,5'隣接領域にトランスポゾンの挿入がある対立遺伝子(2型)が存在する.2型ホモの栽培品種は1型を有する品種に比べライプニング時のACS1転写量が少なく,エチレン生成量も圧倒的に少ない.トマトにおいては,ライプニング果実のエチレン生成量を低下させることで日持ち性が向上することから,リンゴではACS1の対立遺伝子型が品種の日持ち性(貯蔵性)の高低を決定する遺伝的要素の一つではないかと考えられる.そこで,この遺伝子型とライプニングの進行度合いの関係を検討した。 適期収穫した栽培品種'ふじ'(ACS1-2ホモ型)および'ゴールデンデリシャス(GD)'(同ヘテロ型)の保冷(0℃)果実を25℃に静置し、3日毎にエチレン生成量と硬度を測定した(3果使用).また,それらから果肉ディスクを調製しACCを含む緩衝液中でのエチレン生成能を測定した.最後に果肉より全RNAを抽出し,ACS1およびリンゴのACC酸化酵素(ACO),ポリガラクチュロナーゼ(PG),β-ガラクトシダーゼ(βgal)の各遺伝子をプローブとしたノーザン解析から,それぞれの発現量の変動を検討した結果,ACC合成量の差,すなわちACS1の遺伝子型の違いがそのままエチレン生成量の差となることが確認された.また,PGやBgalの発現レベルが硬度変化の品種間差,すなわちライプニングの進行速度の直接的な原因と考えられた.さらに,エチレンの処理がこれらの遺伝子の発現パターンを変えたことが確認され,ACS1の遺伝子型とライプニング進行の関係が明らかにされた。
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