2年間の研究成果は以下のように要約できよう。 1. イネα-アミラーゼ遺伝子RAmy3Dの糖による転写抑制現象を解析するため、イネ胚を用いたパーティクルガンによるトランジェント発現系を確立した。この実験系を用いて、この糖抑制現象にヘキソースキナーゼが関与することを示した。あわせて、ヘキソースキナーゼの活性阻害剤であるグルコサミンが糖センサーに影響を与えることを明らかにした。 2. イネα-アミラーゼ遺伝子の糖による発現抑制現象に着目し、RAmy3DならびにRAmy1A遺伝子プロモーターの糖応答シス配列を明かにした。両遺伝子はともに糖による制御を受けるが、その抑制はRAmy3D遺伝子の方が厳密であった。RAmy1Aのジベレリン応答シス配列の内、ピリミジンボックスとGAREが部分的に糖応答性に関与することを明らかにした。 RAmy3D遺伝子においては、GmotifとGATA motifが糖応答性に関与することを示し、光誘導型の光合成遺伝子と関連もあわせて議論した。 3. オオムギ種子胚を用いてα-アミラーゼの糖による発現抑制現象を解析した。オオムギα-アミラーゼ遺伝子ではジベレリンによる発現誘導が知られているが、種子胚では糖による発現抑制が観察されるのに対し、アリューロン細胞では観察されなかった。詳細な解析により、糖と植物ホルモンシグナリングのクロストーク現象を明らかにした。 4. ジベレリンによるイネ葉鞘長促進現象に着目し、この促進が主に細胞伸長によって賄われていることを明らかにした。第2葉鞘では、これに伴い細胞壁物性の変化、浸透物質の増加、可溶性糖の増加、デンプン顆粒の分解が観察され、伸長現象に伴う糖輸送・転流の活発化が推察された。
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