| 研究概要 |
高塩条件下でも生育可能な塩生植物は,通常の中生植物にはない強い耐塩性を持つ.本研究では,塩生植物であるアカザ科Atriplex属の培養細胞を用いて,塩ストレス下において発現するタンパク質に注目して,細胞レベルでの耐塩性機構の解明を目的としたものである.Atriplex属lentiformis,halimus,glaucaの3種の培養細胞を用い,0.2MNaClを含む培地で培養し,非平衡pH勾配とSDSとの2次元電気泳動によって塩に特異的に増加するタンパクを調べたところ,不溶性タンパク画分に,塩処理に特異的な分子量約27kDaのポリペプチド(SP1)の発現が認められた。強塩基性タンパクであり等電点は8.5以上と推定され,糖タンパクであった。lentiformisを用いその2次元電気泳動のゲルをニトロセルロース膜にブロットし,染色したスポットを切り取り,磨砕し,マウス腹腔内に注射し,抗体を作成した.3種の培養細胞とも免疫化学的に同じSP1の存在が確認された.そのN末端アミノ酸配列を分析した結果、3種類とも同じタンパクと考えられた.固定された20番目までの配列では、既知の塩ストレス関連タンパク質とはホモロジーがなかった。さらに塩処理したlentiformisの培養細胞からmRNAを抽出しcDNAライブラリーを作製した.現在,N末端アミノ酸配列から類推したポリヌクレオチドをプルーブとして抗体を用いて,SP1の遺伝子のクローニングを試みている.また,サブトラクション法による塩に特異的遺伝子ライブラリー作製も試みている.
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