研究概要 |
1.初期生長の品種間変異の解析 個体当りの生長量を種子養分の利用に基づく従属栄養生長(Wh)と光合成に基づく独立栄養生長(Wa)の和とみなして解析を行った.Whの推移は主として最終Wh(Whmax)に左右される1次のロジスチック曲線で表され,Waの増加速度は,相対成長率(RGR)を品種特性値とする指数関数モデルでよく表すことができた.イネ64品種・系統の発芽から分げつ発生時期までの生長を水耕条件下で比較したところ,個体当り生長量には190〜590mg,Whmaxには9〜22mg,RGRには8.6〜11.4mgg^<-1>(℃d^<-1>)の変異がみられた.上述のモデルを用いた感度解析の結果,初期生長が旺盛な品種の生長は,WhmaxよりもRGRに起因する傾向が強いことがわかった.Whmaxの品種間差異は,種子養分の利用率や利用養分に対する生長効率といった形質の影響は小さく,発芽時の種子重に直接左右された.RGRは,純同化率と正の相関を,地下部への乾物分配率と負の相関を示す傾向があった. 2.圃場条件下での雑草との競争力における初期生長性の意義 初期生長性が異なる4品種をタイヌビエとの混植および単植条件下で栽培した.雑草競合がイネの生長に及ぼす影響は生育初期からみられ,その程度は初期生長性の優れる品種で明らかに小さかった.そして,地下部遮断処理の有無を異にする混植処理区での結果から,生育初期における雑草競争力の差異には,とくに地下部要因が強く関与していた.イネ品種の初期生長性を評価する場合,このような地下部の生長に着目することの重要性が認識された.
|