1. 日本産野生種の葉より抽出、精製したtrnK遺伝子断片に数種のプライマーをPCR反応させ、読まれたmatK遺伝子産物をDNAシークエンサーにより解析したが、解析に必要なDNA量としては足りず、サブクローニング法を用いてDNAを増殖することになった。 2. trnK遺伝子をプラスミド(Tベクター)に組み込み、形質転換体を作り、大腸菌を培養することにより増殖した。増殖された大腸菌からプラスミド DNAを抽出、精製し、1と同様にmatK遺伝子産物をDNAシークエンサーにより解析した。材料として用いた、日本産ハマナスと、類縁の遠いと思われる中国産のRosa persicaの間で塩基配列につき約20数塩基の違いがみられた。 3. 同時に、最近、植物分類に用いられるようになった核内の18Sと26SのリボソームDNAの間にはさまれたITS(internal transcribed spacer)領域の解析を行った。本領域はmatK遺伝子に比べ塩基数が少なく(630〜650塩基)、しかも塩基置換速度が早いため、より近縁な種の間の類縁関係をみるには有効と考えられる。材料として、日本産野生種数種と比較のため、中国産の種を用いた。最節約法により解析したところ、バラ属内の節間ごとにクレードを形成した。Synstylae節に属するノイバラ(R.multiflora)は同節に属するモリイバラ(R.luciae var.hakonensis)とヤブイバラ(R.luciae var.onoei)と、Rosa節に属するハマナス(R.rugosa)はカラフトイバラ(R.marretii)とそれぞれクレードを形成した。また、亜属の異なるR.persicaは他の種から離れたところに位置した。
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