研究概要 |
バラ科植物のオルガネラDNA、自家不和合性に関与するS-遺伝子型を解析し、次のような成果を上げた。 バラ族27品種の葉緑体DNA上のmatKならびtrnKイントロンの塩基配列データを基に分子系統樹を作製した。バラ亜属は節ごとに分岐群を形成する傾向が見られ、Rosa節とCarolinae節が近縁である点などは既存の分類群とよく一致していたが、R.californica'Plena'がCaninae節の品種と分岐群を形成する、Pimpinellifoliae節の品種が多系統的である等、一致しない点も見られた。これらの点については、現在さらに詳細な解析を行っている。また、現代バラの起源となった7品種のうち、6品種が近縁であったことから、現代バラの遺伝的多様性は極めて限られたものであることが示唆された。 2.リンゴ野生種、栽培種42品種のS-遺伝子型を解析し、27品種のS-遺伝子型を同定した。この過程で、(1)‘あかぎ'‘つがる',‘陽光'の花粉親が、それぞれS_7、S_7、S_9遺伝子を持つこと、(2)‘旭',‘東北2号'(‘旭'‘x'ウ-スターペアメイン')のS遺伝子が全く同定されなかったことから、少なくとも3種類の未同定のS遺伝子が存在すること、(3)‘金星'、‘きざし'の花粉親は、それぞれS_9、S_3遺伝子を持つ既報のものと異なる花粉親であること、(4)‘印度'、‘北の幸',‘祝'、‘メク10'に未だ単離されていないS_g遺伝子が存在すること、(5)リンゴのS遺伝子群はMalus xdomestica以外の野生種にも存在するが、バラ科の他の属には存在しないこと等の知見を得た。さらに多くの品種でS-遺伝子型の解析を進めており、多型に基づく詳細な系統関係を明らかにする予定である。
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