野菜は収穫後急激な代謝の変動を受け、老化が進行し、品質が低下する。ブロッコリー小花(花蕾)の収穫後の老化の機構を生理学的、生化学的、分子生物学的に研究を行ってきた。ブロッコリー小花は収穫後常温で急速に老化が進行する。アスコルビン酸が急速に分解し、クロロフィル含量が低下し、小花は黄化する。この過程でエチレン生成量は増大し、その後老化の進行と共に減少する。エチレン生成の鍵酵素となるACC(1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸)酸化酵素の活性は、エチレン生成の増減とほぼ平行して顕著に増大し、ピークに達した後低下した。ACC酸化酵素をブロッコリー小花より抽出し、その酵素学的性質を調べた。また一方ブロッコリー小花よりRNAを抽出し、それからcDNAを作成し、ACC酸化酵素のcDNAで形質転換した大腸菌からACC酸化酵素を精製して、ブロッコリーの酵素と性質を比較した。ジャスモン酸メチルを与えるとACC合成酵素、ACC酸化酵素の誘導が早まり、エチレン生成が促進され、ブロッコリー小花の老化が速められた。ブロッコリー小花の老化において、内生ジャスモン酸の関与が想定された。サイトカイニンはエチレン生成を抑制し、老化を抑えた。ブロッコリー小花の老化を抑制し、品質を保持するためには、第一に低温貯蔵が有効であり、またMA包装も効果的であった。老化においてエチレンは必須の役割を果たしており、エチレンの生成と作用を抑制することにより、ブロッコリー小花(花蕾)の老化を制御し、ブロッコリーの品質低下を抑制することが可能である。
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