果実の成熟・軟化機構を分子レベルで明らかにすることは、近年急速に進展している植物の遺伝子組み換え技術を適用することによって、成熟・軟化特性を改変し、流通特性を改善した形質転換品種の開発に直結する。本研究は、果実の硬度を決定する細胞壁のヘミセルロース及びペクチン成分の分解に関与すると考えられているセルラーゼ及びポリガラクチュロナーゼ遺伝子のクローニングとその発現解析を行ったものである。メロン果実より6種のセルラーゼ遺伝子をクローニングすることに成功した。遺伝子発現解析の結果、幼果実で活発に転写され細胞の伸張に関与するグループと常に一定レベルで発現し細胞膜結合部位を持つグループに分類することができた。しかしながら、果実で成熟特異的に発現するセルラーゼ遺伝子はクローニングされなかった。本研究の進行中に、米国の研究グループによってメロン果実のポリガラクチュロナーゼ遺伝子のクローニングが発表された。そこで、研究を拡大、深化させるために対象をメロンと同じウリ科のキュウリと果実成熟時に急激な高度低下の起こるカキ果実に拡大し、遺伝子クローニングを行った。その結果、水分ストレスを与えて果実軟化が誘導されたキュウリ果実および軟化進行中のカキ果実より各1種のポリガラクチュロナーゼ遺伝子が得られた。ノーザン分析によって、キュウリ果実の遺伝子は水分ストレスとエチレン処理によって顕著に発現が誘導され、エチレンの作用阻害剤である1-MCPによってその発現誘導が抑制されることが明らかになった。
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